「1日で会社ができる?」

最近、「会社の設立を迅速にする」という政府の方針で、通常、登記は、「申請の順番に処理する」のが原則なのですが、会社の設立については他の登記と区別して申請から完了までの登記期間を短縮するということになりました。

では、相談を受けてから本当に1日で会社を設立することができるのでしょうか? 

通常、うちのような事務所で受ける会社の設立の相談の場合は、「会社の目的」(何をする会社なのかを決める)欄の記載の検討に1番時間がとられます。最初の相談から登記申請まで、だいたい1週間ぐらい掛かるのが一般的です。

1番問題なのは、実務的には、株式会社の場合、定款の内容が決まってからでないと定款認証のための委任状に押印がもらえないことです。なぜなら、内容が決まった定款を合綴して(袋とじにして)委任状を作成しなければならないからです。なので、実際は依頼者とメールで、「会社の目的」欄について、あれこれと数往復やりとりをしてから、定款の内容を確定し、それを公証人のチェックを受け、そして、公証人に確認してもらった委任状に押印をもらって、やっと公証役場で認証手続きができるということになります。まあ、テクニック的に1日でできないかといわれれば、できるかもしれないけれど、公証人の予定もあるし、依頼者の予定もあるし、私の予定もあるし、なかなか1日でということにはなりません。実際は、公証人に、「〇日にお願いしたいのですが」とお伺いをし、日程を決めてから定款に電子署名をし公証役場に送付をして、依頼者に委任状に押印と印鑑証明書をもらって、当日、認証手続きということになります。でも、そんなにたいしたことではありません。

もう一つは、登記の申請書には、「資本金を振り込んだことの証明書」を添付しなければならないのですが、定款の認証後でないと資本金の振込ができないということです。この資本金の振込時期については諸説あり、「定款作成後ならば、定款認証前の出資でも認められる」という取り扱いがされている法務局もあるようですが、補正(訂正)になれば余計に手間と時間がかかるので(あらためて払い込みをしてもらわなければならないから)、当事務所では、定款認証後の払い込みをお願いしています。

ということで、実務的に司法書士として「こうなればいいのに」と思うことは、「定款認証の委任状をペラ1枚でOKにする」(この点についてはすべてオンラインでできるようにするらしい)、「資本金の振込を証する書面」は定款作成後(例えば電子認証した日以後)ならば定款認証前でも認める(あるいは、もう要らないとか)ということを法務局の統一見解にしてもらえれば(あるいは条文化すれば)、だいぶ時間が短縮できるのではないでしょうか。

あと、会社設立日を「発起人決定書」などで決められるようにすればもっといいのにと思います。そうしたら、かえって特定の日に混みあっちゃうかな。

でも、なんというか「1日でできるんですか?」と質問する前の段階で、余裕をもって連絡をもらって、じっくりと検討した上で設立する方がいいと思います。せっかく会社を作るんだし、あるいは、「今は、会社にする必要はないんじゃないですか」ということもあるしね。

なにわともあれ、登記を申請から出来上がるまでの期間が短くなるのはいいことですよね。