(相続人以外に受遺者等の利害関係者がいないケースについての一般的なご説明になります。また、ご商売をなされている方の中には、取引のある金融機関との間に約束がある場合もあるので、本記事はあくまで一つの意見としてご参考にしてください)

【遺言執行に関する条文】(民法1004条~1021条)

  1. 遺言の中には、親族ではなく弁護士や金融機関が遺言執行者に指定されている場合があります。その場合、必ず、その遺言執行者に連絡をし、業務を依頼しなければならないのしょうか? つまり、弁護士や金融機関に遺言執行を依頼した場合、「相続財産の何%」で計算したのか、何百万円といった高額の見積もりを提示されたという相談が、実際、年に数件あるのです。
  2. この点、遺言執行者の任務は、その就職を承諾したときからであり(1007)、また相続人等は、遺言執行者に対し、遺言執行者になるかどうかを催告することができる(1008)とあって、しなければならないと規定されてはいないので、必ずしも遺言で記載されている遺言執行者にその業務を依頼しなければならないわけではないといえます。
  3. そもそも相続人全員の同意がある場合、すなわち遺言書を使わずとも不動産の名義変更や預貯金の解約などができる場合には、その遺言書を活用する必要もないわけですから、全ての手続きを相続人だけで進めることができるのは当然です。後日、遺言執行者に指定された者がそのことを知ったとしても、遺言書の内容に沿って相続手続きがされているのであれば何の問題もなく、またたとえ遺言書の内容とは違った財産の分配をした場合でも、相続人全員の同意があれば、つまりそのことを異議を唱える相続人がいないのであれば問題はないといえます。
  4. なぜなら、遺言執行者は、遺言者(被相続人)の代理人ではなく、相続人の代理人であり、その相続人の全員に不利益もしくは不都合がないのならば、なんら異論を言う実益がないからです。
  5. また例えば、不動産の名義変更で、ただ単に「相続人Aに相続させる」旨の遺言の場合、死亡によって法律上当然に財産の移転は行われていると考えられるので、そもそも遺言執行者の義務は顕在化することもなく、実務上も、公正証書遺言書があれば、相続する者のみの申請により名義変更の手続きをすることができます。
  6. 逆にいえば、相続人全員の同意が得られない場合には、やはり遺言執行者に依頼することが簡便であるといえます。
  7. なので、これから遺言をする場合で、弁護士や司法書士などの第三者に遺言執行者を依頼される場合は、あらかじめ遺言執行に関する報酬についても、その額を具体的に遺言書に記載して、相続人にもその旨を事前に明らかにしておくなど、後日の紛争を予防しておくことをお勧めします。