吸収合併の手続

費用の目安

報酬費用
手続一式
【前提条件】
・3社まで
・関連同族会社
15万円
登記確認
・2社分
670円
官報公告
・合併公告
・決算公告
約22万円
(内容による)
契約書貼付印紙4万円
登記申請6万円~
(増資がない場合)
債権者保護手続き
(郵便代)
郵便代実費
登記事項証明書
(完了後)
500円×取得数
その他実費
・郵便代など
実費
合計15万円①合計額②
消費税消費税額③
源泉税
復興特別取得税
計算額④
総額①+②+③-④総額45~50万円程度
(内容によります)
・本店移転等を併せて申請する場合は報酬・登録免許税とも別途加算があります。

電話 06-6310-8846


  • 一般的には、ほとんどの中小企業は同族会社(グループ会社)であるため、株主といっても家族間で保有しており(あるいは親会社が子会社の株主となって)、また会社の組織再編を検討する場合も、家族が経営する複数の会社について、合併をしたり、分割をしたり、あるいは株式交換をしたりするケースがほとんどといっても過言ではありません。
  • また、合併等に関する会社法の規定では、「新株予約権」や「種類株式」を設定している場合について細かく規定していますが、実際には、そのような定めを導入している会社は少ないのが実情であります。

→ そこで、このページでは同族会社における会社の吸収合併、その中でも最も一般的なケースである完全親会社による完全子会社の合併手続き(無対価合併)をベースにして、さらに説明を簡略化するため、以下の前提を条件とした場合について解説しました。

  • 両社とも「閉鎖会社」(発行する全ての株式について譲渡制限の規定がある)である。
  • 新株予約権、種類株式、登録質権などの特別の定めがない。
  • 社債を発行していない。
  • 株券不発行会社(もしくは実際に株券を発行していない。)
ひとくちメモ
  • 吸収合併について、会社の種類は問題となりません。株式会社と合同会社が合併することもできますし、またその場合に合同会社を存続会社とすることもできます(748)。消滅会社が、清算中の会社(474①)や、債務超過の会社であっても、吸収合併は可能です(詳解1196)。
  • ただし、有限会社や清算株式会社は合併後の存続会社となることはできません。なお、有限会社は合併だけではなく、会社分割においても承継会社にはなれません。また、有限会社を設立する新設合併、新設分割も不可となります。(H17整備法37条)

1.吸収合併契約書の作成

〇 合併契約書には法律で必ず記載しなければならないとされている記載事項(法定記載事項)について漏れなく記載する必要があります(749)。合併契約書は登記の添付書類であり省略することはできません。合併契約書には印紙4万円を貼付し、合併の前後において本社に備え置くことが必要となります。

  1. 合併後も存続する会社(存続会社)の商号及び住所
  2. 合併により消滅する会社(消滅会社)の商号及び住所
  3. 消滅会社の株主等に対して金銭等を交付するときは、当該金銭等についての詳細
  4. 吸収合併の効力発生日(確定日を定める)

〇 合併契約書の書式を知りたい方は、検索窓に「合併契約書」と入力し、画像で検索してみてください。事前・事後の備置書類をネット上で公開している会社が多数あり、その中に「合併契約書」が確認できます。

無対価合併について
  • 完全親子会社(存続会社が、消滅会社の100%株主である場合)や、100%子会社同士の合併(完全兄弟会社同士の合併:株主がオーナー1人の場合)などでも、債務超過会社を消滅会社とする場合等においては、合併対価を交付しない吸収合併をすることができます。すなわち、上記の3について、消滅会社の株主等に対して金銭等(存続会社の株式等)をまったく交付しないということになります。その場合、合併対価の割り当てがないので、合併に際し、存続会社は資本金の額を増加させることはできません。
  • なお、吸収合併をする実質的な動機や目的はさまざまですが、無対価合併でいくか、あるいは消滅会社の株主に金銭等を割り当てるかは、税理士等が判断するものであり、司法書士の立場で判断することにはできませんのであらかじめご了承下さい。

2.合併契約書の承認

合併契約書を承認する株主総会について

  • 存続会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の「特別決議」によって、合併契約の承認を受けなければならなりません(795・1)。承認決議たる株主総会の時期については、効力発生日前であればいつでも構わないと解されます。それは債権者保護手続きたる公告・催告の前後を問いません(詳解1215)。

〇 なお、簡易な手続きによる「略式合併」「簡易合併」の規定がありますが、株主が家族など少人数に限られている場合は、通常の合併手続き(株主総会の特別決議)で十分に簡易であって、特に「略式合併」や「簡易合併」などの手続きを適用するメリットはないと思いますので、ここでの説明は割愛します。

    3.株式買取請求手続き 

    〇 反対株主は会社に対して株式を買い取ることを請求する権利が認められていますが、同族会社では反対株主がいることは一般的には想定されないため、ここでの説明は割愛します(785,797参照)。

    4.株券提供公告 

    〇 株券発行会社が吸収合併する場合、合併消滅会社株券提供公告及び通知が必要となります(219参照)。

    • しかし、登記事項証明書に「当会社の株式については、株券を発行する」という記載があっても、実際には株券を発行していない場合がほとんどです。その場合は、閉鎖会社(非公開会社)であれば、当該公告及び通知にかえて、株主名簿に株券不所持の申し出がある旨を記載したものに代えることができます。公開会社であれば、事前に閉鎖会社にして、同時に「株券を発行する旨の定め」を廃止しておくことを検討します。
    • 株券不発行会社は、登記簿上その旨が明らかであり(登記事項証明書に「株券の発行に関する定め」が記載されていない)、すなわち株券提供公告を要しないことが登記官に明らかであるため、この手続に関する添付書面を要しません(ハンドブック554P)。会社法施行以後に設立された会社は、ほとんどの場合、株券不発行会社として登記されていると思いますが、会社法施行以前に設立された会社で、登記事項上、株券発行の定めの規程がある場合は、他の登記事項を変更する機会があれば、その際に廃止しておくことをお勧めします。
    公開会社・閉鎖会社について
    • 登記事項証明書の中に「株式の譲渡制限に関する規定」が定めらている会社を閉鎖会社といいます
    • 会社法施行から10年以上たちますので役員の任期の関係から、すでにほとんどの会社は「閉鎖会社」になっていると思いますが、ご自身や専門家以外に依頼して設立の登記をした経緯のある会社の中には「株式譲渡制限に関する規定」が定められていないことが時折見られます。
    • 費用はかかりますが、将来的に上場するつもりがない場合は、他の登記事項を変更する機会があれば、併せて「株式譲渡制限に関する規定」の登記をしておくことをお勧めします。

    5.債権者保護手続き  

    〇 吸収合併をする際には、債権者保護の手続(799)が必要となりますが、この債権者保護手続きが吸収合併の手続きの中心であるといえます。特に公告期間など要件を満たさない場合は、最初からやりなおすということにもなりかねませんので、十分に注意をして設定検討下さい。

    • 1.官報公告(官報公告については、官報のサイトを参照下さい。)
    • 2.最終事業年度にかかる決算公告(消滅会社・存続会社)
    • 3.債権者への各別の催告

     決算公告について

    •  株式会社は、毎年の決算書類について公告等をすることが法定されています(440)。
    • これをしていない場合は、合併公告と合わせて最終事業年度に係る貸借対照表等の要旨の公告します(施行規則199⑦)。
    • ところで、この「最終事業年度に係る」とは、合併公告をする時点において、定時総会の承認を受けた決算(貸借対照表等)という趣旨であるので、例えば、毎年5月に定時総会が予定されている3末決算の会社が、4月に合併公告をする場合は、その合併公告をする時点で、最新の公告義務がある決算書類として、前年の3月末時点(すなわち前々期の)の決算についての内容を公告することとなります。(その年の決算書類が仮に既に出来上がっていたとしても、まだ定時総会の承認を受けていないので該当する決算書類とはなりません)
    官報公告の閲覧(無料)

    〇 インターネット官報

    • 官報公告はネット上で誰でも無料で閲覧できます。
    • 上記のリンクから「本日の官報」あるいは「過去の官報」のタブをクリックしてみてください。
    • 吸収合併に関する公告は、「本紙」ではなく、「号外」の最終ページから10ページくらいのあたりに載っていますので、一度、実物を確認してみてください。

     債権者への催告について

    • 「知れたる債権者」の定義については、会社法の条文上では特に「知れている債権者」という以外には定められておらず、おそらく、どの参考書にも「どこからどこまでの債権者」といった説明はされていないと思います。
    • つまり各別の催告を要する「知れたる債権者」の範囲については、少額の債権者に対しても個別催告が必要であると考えるのが「原則」であり、催告をする債権者の範囲を限定すればするほどリスクが高くなるといえます。逆にいえば、知れたる債権者全員に催告しておけば、少なくとも手続上のリスクはゼロになるということになります。
    • しかし、実務上は少額の債権者への通知は省略することがあります。
    • 例えば、仮に突然の連絡があった場合に直ちに弁済可能な範囲の債権、あるいは毎月発生し、毎月消滅する性質の少額債権の債権者(公共料金の支払いなど)に対しては、滞納している場合は除き、個別の催告を省略しているのが一般的だと思いますが、これは、あくまでも個別に検討すべき論点であり、また自己責任の判断となります。
    • 後日、債権者保護手続きの懈怠を理由に合併の無効等を主張された場合には、早々には解決できなくなる可能性も残るため、登記手続き上の添付書類としてよりも、後日の紛争の予防として、そのようなリスクも含めて催告すべき債権者を判断した方が良いと考えられます。
    金融機関への連絡
    • 債権者の中に金融機関がある場合は、事前に説明し理解を得ておくことが一般的です。
    • 特に「日本政策金融公庫」から借り入れがある場合は、決算書類等などの資料開示を求められたり、その他、会社の状況により調整を求められることがありますので、事前に十分な連絡調整をすることが必要となります
    催告期間について
    • 異議申述の催告期間は1ヶ月以上必要であり、公告の場合と違い、催告については相手方に到着してから1ヶ月間必要なので、異議を述べる債権者が見込まれる場合は、発送日から1ヶ月目の日に、さらに1週間先の日を満了日として設定しておくなど、ある程度余裕を持たせることが必要です。
    • 実際は、官報の公告日と同じ日に各別の催告を発送することが多いと思いますが(官報から官報掲載ページなどの写しがファックスやメールなどで通知されてきます。官報自体は後日送付されてきます)、あらかじめ官報公告でも1か月以上の日を定め(特定の日を定める必要は必ずしもありませんが)、催告期間と同じ異議申立期間を定めることにより、日程調整が簡便なものとなります。
    • なお、登記手続き上は法定の期間が形式的に空いていれば問題ありません。

    吸収合併の登記手続き

    • 効力発生日(合併契約書で定めた日)から2週間以内に、存続会社については「変更の登記」を、消滅会社については「解散の登記」を同時に申請することになります。
    • 管轄が異なるときは、存続会社の本店の所在地を管轄する登記所を経由してします。

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