今日(2019.8.14)、事務所に来てPCを付けたら、「往年の名司会者が前妻に相続」という記事の見出しがあったので、朝の準備をしながら読んだけれど、「こういうザクっとした記事は如何なものか?」と正直思う。離婚した前妻は相続人にはならないので、前妻が「相続」するということは法的には不可能だし、相続人ではないので遺産分割協議の当事者にはならず、前妻と揉めるということは「法的」には考えられないのだ(事実としてそういう可能性があったということは別にして)。
でも、確かに、次のような事情がある場合には、この記事を正当化する事情があるといえばある。
- 前妻との間に戸籍上の婚姻関係が継続していて、後妻とは事実婚であったという場合
- 遺言で、前妻に対して「包括遺贈」する旨の遺言をしていた場合
1の場合は問題なく相続人となる。
2の場合には,遺留分の論点は置いておくとして、直接、相続財産を受領することは可能だ。この記事の範囲で事実を推測すると、おそらくそういうことなのだと思う。また、仮に、包括遺贈を受けたということならば、遺産分割協議の当事者になるので(相続人と同様の権利義務を負う)、法定相続人が包括受遺者と揉めることもありうることになる。
確かに、包括遺贈による場合、納税は相続税の計算によるといえども(加算はあり)、相続税の配偶者に認められた控除枠ことを考えると、著名人の顧問税理士がそのようなスキームを組むとも思えない。いずれにせよ、その場合でも、生前に後妻に十分な資産を残すようにしているはずなので、やはり記事としては、どうなのかなと思います(リンクは国税庁サイトへ)。
ということで、個人的には、この事実があったとして、記事にまとめ方としては「遺言書があれば基本的には遺言者の意思に従って相続財産が引き継がれますよ」という内容の方がよいと思いますが、如何でしょう?